TETSUYA KUSU Photography

Issued by one Japanese photographer from the world's end.

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ロイ・クラトンの一日

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タイにいる理由は後述する事にしよう。

タイ語で「ロイ」は流す、「クラトン」は蓮をかたどって作った灯篭を意味する。
陰暦12月の満月の夜、銘銘の願いを込めて灯篭を流す・・・

ここアンパワは水路の村、週末は運河がマーケットになり、物売りの小船で埋め尽くされる。

「挽きたてのアイスコーヒーが飲めるところ、ない?」

絡みつくような暑さに昼寝から目覚めた僕は、宿で働くピ・エーに尋ねた。
「挽きたて」と念を押したのは、タイでは基本的にコーヒーというとネスカフェにコンデンスミルクを
大量に入れた、信じられないぐらい甘い飲み物を給されることになるからだ。

それも普段ならまんざらでもないのだが、今日は気分ではなかった。
「五、六軒隣りがそうだよ。」
宿は運河に面し、掃き出しになった間口いっぱいの古い観音扉は、日中、開け放しになっている。
そこに腰を掛けスリッパを履き、少しでも陽に当たるまいと運河沿いのソイ(小路)をそそくさと歩く。

たどり着いた店は旧家屋を改装した小奇麗な一軒家。
奥から現れた、おそらくオーナーらしき女性に「カフェ・ソッ・イェン(アイスコーヒー)、ください」と
尋ねると、「はい、アイスコーヒーね。少しまってて。」と流暢な英語が返ってきた。

圧倒的な割合でタイ人観光客しか来ないアンパワ村の住人には、英語を話せる人がほとんどいない。
少々戸惑ったが、あまりにものどが渇いていたのでそんな事はすぐに忘れ、時折小船が行き交う
川を眺めながら冷たいコーヒーを勢いよく飲んだ。

のどかな時間が流れている。
帰りがけにふと店の奥を見てみると、さっきの女性と、その友人らしきおばさん、
そして僕よりひとまわりほど若い、ちょっと太った店員の女の子がバナナの茎と葉っぱを囲んで内職をしている。

どうやらロイ・クラトンを作っているようだ。

僕はいつも、興味の向いた方向へと無意識のうちに近寄ってしまう癖があり、例に漏れずこのときも
いつの間にかその輪の中に入っていた。

あまり通じないタイ語生活が二、三日続いていたのと、気ままな旅とは言え出発前の予定の中に一応、
ロイ・クラトンの撮影をすることは決めていたので、ここぞとばかりに話をしてみる。
ロイ・クラトンの由来は?、皆こうやって手作りしているのか、このあたりの一番にぎやかで写真の撮りやすいところ・・・

そんなこんなで半時ほど経ちひとしきり写真も撮らせてもらったところで、
女性ほうから「あなたも自分のロイ・クラトン、作ってみる?」と言ってくれた。
まあ、あれほど興味深げに触ったり聞いたりしていたら、そう言わざるを得ないだろう。
半分、待ってました!の僕は返事もそこそこに、彼女の言う「マイ・クラトン」を作り始めていた。

15分後。
皆が作った物と並べてみる。
見よう見まねで作った「マイ・クラトン」は、「男らしい」と人気だった。
「初めてのわりにはよく出来ました」ととらえる事にした。

帰り際に「僕は今晩、さっき教えてもらった場所で写真を撮るつもりだけど、みんなはどうするの?」
せっかくなので一緒に願いを込め、みんなで流す事が出来たらと思い声をかけてみたところ、
「私たちは毎年、目の前の運河に流してるの。」
それなら仕方ない。では、またあとで。

夕方から人ごみでごった返す中、僕は一番大きな会場の中で格闘していた。
相変わらずの行き当たりばったりな撮影スタイルだが、幸運な事にいつの間にか貸しきりボートに
乗り込んで、さまざまなアングルからロイ・クラトンフェスティバルを撮影する事ができた。

それと同時に撮影しているあいだ中なんとなく、僕の「マイ・クラトン」はこの太い川ではなく、
彼女たちと同じようにあのアンパワの細く穏やかな運河に流そう、と思うようになっていた。
なぜそう思ったのかは分からない。ただ、アンパワの村には、どこか懐かしい、ふるさとを連想させる空気が漂っている。
撮影の充実感と高揚感でへとへとに消耗した僕の神経がその琴線に触れたのだろうか。

疲れた体を引きずりようやく宿にたどり着くと「作ったロイ・クラトン、流し忘れるなよ」とピ・エーが待っていてくれた。
彼が見つめる中、ろうそくに火をつけそっと手を離すと、男らしいであろうマイ・クラトンは
静かに運河の流れに乗り、やがて見えなくなっていった。

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  1. 2009/11/03(火) 01:18:32|
  2. Thailand
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Photographer 楠哲也
写真mixi

タイの小島に6年住んだのちフォトグラファーに転身。タイで培ったダイビングの技術を生かし、帰国後は週刊誌などで水中をテーマにした写真を次々に発表、広告や雑誌の撮影で年間の半分近くを海外取材に費やす。 現在は水陸のスチール撮影にとどまらずタイの国営放送でムービーカメラマンも担当している。
オフィシャルホームページは
tetsuya-kusu.com

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