TETSUYA KUSU Photography

Issued by one Japanese photographer from the world's end.

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湘南の日々

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眠い眼をこすりながら愛車の黄色いハマーに跨り「サーファー通り」をまっすぐに海へと向かう。

自転車で5分、浜見山陸橋の磨り減った手すりに立ち上がっての波チェックは日課みたいなものになった。
今朝の「辻堂正面」はモモ〜コシでオフショアの面ツル。砂の着きも良いのか程よいトロさで割れている。
まだ足元のおぼつかない僕には絶好のコンディション。

すぐさま家に引き返し、ウエットスーツに着替えて古びたロングボードを自転車に積み込む。
再び海岸に出る頃には何人かがもうすでにラインナップ上に並び、沖からやってくるうねりを見つめていた・・・

湘南に引越してきてから数ヶ月が経つ。

日本に帰ってくる直前に建てた計画の中に「三年後→湘南方面に引越し」という項目があった。
一ヵ月後、三ヵ月後、半年後、一年後、三年後、五年後・・・それぞれのタイミングでいったい自分はどうあるべきか?
不安と期待が入り混じる中、全くの白紙である自分の将来に、生きる指針となるべく好き放題に絵を描いてみた。
それら全てが思い通りになっているわけではないが、幸運なことに僕は沢山の人々からの応援のおかげもあって、
曲がりなりにもその多くを実行してきた。「湘南移住計画」もそのうちの一つ。

三年後→湘南という考えに至ったのは、そのころにはたぶん東京に疲弊しきっているだろう、という予測のもとに
心身をリラックスさせることが出来る場所、そして仕事上東京から近く、成田、羽田、新幹線へのアクセスが良い所、
という理由からだったと思う。

事実、目黒に住んだ二年半は大変充実していたが、反面、幼いころから山河に親しみ大阪を離れてからはアジアを
放浪三昧、挙句の果てに大自然が広がるタイの小島で6年間も生活していた僕にとって、生まれて初めてのメトロポリスは
想像以上に神経をすり減らす場所でもあった。

そんな折、ひょんなことから辻堂駅の海側で古い平屋の一軒家を発見し、駅近その他、僕が想定する条件に見合っていたので
見に行った日にほぼ決定。当初の計画よりも半年ほど早まったが予定していた通り湘南に引っ越した、というわけだ。
思えば趣味をもち余暇をうまく使ってリラックスするという事が不得意な僕が、珍しく自分の環境を考えてとった行動と言っていい。

上半身はだかで歩いていても誰もなんとも思わない、緩い町の雰囲気と自然との距離。
さらに引越しによる思わぬ副産物は、タイで苦楽をともにした友人が近くに多く住んでいることだった。
このあたりに住んでいる事は勿論分かってはいたが、友人が近くにいることがこれほどまでに心強いものだとは思わなかった。
必要最低限のモノだけに囲まれたシンプルで質素な生活だが、物質で満たされるタイプの人間ではないので
これ以上を望むべくもない。

今僕の置かれている状況の、全てが満足できるものと言うわけでは決してない。
仕事をやっていく上での悩みは尽きない。白紙であるということは前途洋々、茫漠たる地平が広がっているとも考えられるが
裏を返せば全くの不透明、よほどの楽天主義者である僕でも一抹の不安を覚える時がある。
唯一の心の拠り所といえば、例の自分勝手な人生計画を信じきる事ぐらいだ。
しかし湘南へ来てからというもの、少なくとも精神衛生上の問題は改善されたように思う。

遊歩道沿いの駐輪スペースに、乗り捨てるようにハマーを置いて海岸へとむかう。
はやる気持ちを抑え、ストレッチをしながら朝の凍て着く空気を胸いっぱいに吸い込むと、日々の懊悩が洗い流される。
ふと右手を見ると、とっくに冠雪した富士山が威風堂々、その澄んだ空気の中に姿を晒していた。

  1. 2009/12/15(火) 02:08:31|
  2. Hawaii
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ロイ・クラトンの一日

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タイにいる理由は後述する事にしよう。

タイ語で「ロイ」は流す、「クラトン」は蓮をかたどって作った灯篭を意味する。
陰暦12月の満月の夜、銘銘の願いを込めて灯篭を流す・・・

ここアンパワは水路の村、週末は運河がマーケットになり、物売りの小船で埋め尽くされる。

「挽きたてのアイスコーヒーが飲めるところ、ない?」

絡みつくような暑さに昼寝から目覚めた僕は、宿で働くピ・エーに尋ねた。
「挽きたて」と念を押したのは、タイでは基本的にコーヒーというとネスカフェにコンデンスミルクを
大量に入れた、信じられないぐらい甘い飲み物を給されることになるからだ。

それも普段ならまんざらでもないのだが、今日は気分ではなかった。
「五、六軒隣りがそうだよ。」
宿は運河に面し、掃き出しになった間口いっぱいの古い観音扉は、日中、開け放しになっている。
そこに腰を掛けスリッパを履き、少しでも陽に当たるまいと運河沿いのソイ(小路)をそそくさと歩く。

たどり着いた店は旧家屋を改装した小奇麗な一軒家。
奥から現れた、おそらくオーナーらしき女性に「カフェ・ソッ・イェン(アイスコーヒー)、ください」と
尋ねると、「はい、アイスコーヒーね。少しまってて。」と流暢な英語が返ってきた。

圧倒的な割合でタイ人観光客しか来ないアンパワ村の住人には、英語を話せる人がほとんどいない。
少々戸惑ったが、あまりにものどが渇いていたのでそんな事はすぐに忘れ、時折小船が行き交う
川を眺めながら冷たいコーヒーを勢いよく飲んだ。

のどかな時間が流れている。
帰りがけにふと店の奥を見てみると、さっきの女性と、その友人らしきおばさん、
そして僕よりひとまわりほど若い、ちょっと太った店員の女の子がバナナの茎と葉っぱを囲んで内職をしている。

どうやらロイ・クラトンを作っているようだ。

僕はいつも、興味の向いた方向へと無意識のうちに近寄ってしまう癖があり、例に漏れずこのときも
いつの間にかその輪の中に入っていた。

あまり通じないタイ語生活が二、三日続いていたのと、気ままな旅とは言え出発前の予定の中に一応、
ロイ・クラトンの撮影をすることは決めていたので、ここぞとばかりに話をしてみる。
ロイ・クラトンの由来は?、皆こうやって手作りしているのか、このあたりの一番にぎやかで写真の撮りやすいところ・・・

そんなこんなで半時ほど経ちひとしきり写真も撮らせてもらったところで、
女性ほうから「あなたも自分のロイ・クラトン、作ってみる?」と言ってくれた。
まあ、あれほど興味深げに触ったり聞いたりしていたら、そう言わざるを得ないだろう。
半分、待ってました!の僕は返事もそこそこに、彼女の言う「マイ・クラトン」を作り始めていた。

15分後。
皆が作った物と並べてみる。
見よう見まねで作った「マイ・クラトン」は、「男らしい」と人気だった。
「初めてのわりにはよく出来ました」ととらえる事にした。

帰り際に「僕は今晩、さっき教えてもらった場所で写真を撮るつもりだけど、みんなはどうするの?」
せっかくなので一緒に願いを込め、みんなで流す事が出来たらと思い声をかけてみたところ、
「私たちは毎年、目の前の運河に流してるの。」
それなら仕方ない。では、またあとで。

夕方から人ごみでごった返す中、僕は一番大きな会場の中で格闘していた。
相変わらずの行き当たりばったりな撮影スタイルだが、幸運な事にいつの間にか貸しきりボートに
乗り込んで、さまざまなアングルからロイ・クラトンフェスティバルを撮影する事ができた。

それと同時に撮影しているあいだ中なんとなく、僕の「マイ・クラトン」はこの太い川ではなく、
彼女たちと同じようにあのアンパワの細く穏やかな運河に流そう、と思うようになっていた。
なぜそう思ったのかは分からない。ただ、アンパワの村には、どこか懐かしい、ふるさとを連想させる空気が漂っている。
撮影の充実感と高揚感でへとへとに消耗した僕の神経がその琴線に触れたのだろうか。

疲れた体を引きずりようやく宿にたどり着くと「作ったロイ・クラトン、流し忘れるなよ」とピ・エーが待っていてくれた。
彼が見つめる中、ろうそくに火をつけそっと手を離すと、男らしいであろうマイ・クラトンは
静かに運河の流れに乗り、やがて見えなくなっていった。

  1. 2009/11/03(火) 01:18:32|
  2. Thailand
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岩手の川

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かれらは精魂尽き果て、滔々とした北上の流れに屍を委ねていた。

鮭の遡上の話は以前から友人のくまちゃんに聞いており、いつかは撮影しようと考えていた。
今年は遡上の最盛期に他のスケジュールが集中してしまい諦めかけていたのだが、
幸か不幸かメキシコ行きの予定が急遽変更し時間が出来たので、ここぞとばかりに岩手へと出向いた。

岩手へ行くのは去年に続き二回目、今回ももちろんくまちゃんファミリーにお世話になる。
奥さんが切り盛りする、のんちゃんラーメンに集う皆は相変わらず元気そうで、一年ぶりに来た僕を覚えてくれていた。
気取らない、心からのおもてなしに幸せな気持ちになり、毎度本当に来てよかったと思う。

撮影に許された時間はまる二日、自然の生態を写真に収めるにはあまりにも短い時間だ。
ロケーションの下調べをほとんどしないままやってきたのは、地元の海、川、山を知り尽くした
くまちゃんの、ガイドとしての実力を全面的に信用しているからに他ならない。

まず近くの川にて鮭の存在を確認、橋の上からのぞくと点々と泳いでいるのが見えた。
初めて見る鮭が遡上する姿は感動的であったのと同時に、思った以上に困難な撮影となる事も予想できた。
イメージしているいくつかのシーンの成否は、やはりくまちゃんの知識と経験に大いに依存することとなる。

時間の許す限り川を観察。すばらしい清流が手の届く範囲に沢山あり、あらためて岩手の懐の深さを体感する。
遡上しているはずの川にまったく魚影が見られず少々不安になることもあったが、最終的に案内してもらった場所は
非常に撮影に適した場所で、低い水温に凍えながらも撮影に集中できた。

川で孵った稚魚は流れに乗って下り、海を渡って4、5年の旅の後、再び自らが生まれた川へと帰る。
子孫を残すために、河口から百数十km、時には二百km以上、何も口にせずボロボロに傷つきながら決死の旅をする。
浅い川に横たわり、ひたむきに上流を目指す彼らと水中で対峙した時、感じられたのは自然の偉大さに他ならなかった。

いくつかの課題は残ったものの、短時間の撮影の割りには思った以上に成功し、そのうえ最高に新鮮な
鮭料理や旬の物をたらふくご馳走になった。鮭を観察した後に食べたイクラや切り身は殊更においしく感じ、
たった二日間とは思えないほどの充実感を得て帰路についた。

知っているようでほとんど知られていない岩手の大自然と人々の暖かさ。
「次は熊を撮りに来い」と、冗談ともつかぬ誘いにうっかり乗ってしまう。

二度目のみちのく体験は郷愁とともに、僕の撮影意欲を北へ北へ、と駆り立てる。


  1. 2009/10/28(水) 03:39:07|
  2. Japan
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2010年カレンダー「Clear」ダイブネットにて発売中。

表紙

2010年のカレンダーがスキューバダイビングの総合情報サイト、「ダイブネット」にて発売中。
http://www.divenet.jp/divenet/calender/2010/calender.html

表紙始め、テツの写真もいくつか使っていただいています。
Clearというテーマだけあって、吸い込まれそうな美しい写真がいっぱい。
オフィス、部屋に飾りやすく見ているだけで心癒されるカレンダー、
2010年はClearでお過ごしください。


以下ダイブネットHPより抜粋。
-----------------------------------------------------------------------
カレンダーA2サイズ。
ダイバー必見の潮見表はもちろん、シンプルで書き込みもしやすい仕様。
最後のページに切り取って卓上カレンダーにできるコマカレンダーも掲載。
ご注文はメール、ファックスにて。

●一部:1,200円
●送料:2部まで400円、5部500円、6部以降は一律600円

●問い合わせは
info@divenet.jp
TEL 03-5637-7409
FAX 03-5637-7409

※ご注文の際はお名前、住所、郵便番号、電話番号、希望部数を明記ください。
※発送は9月上旬からとなります。
※代金引き換えのみでの発送となります。
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  1. 2009/09/26(土) 18:11:44|
  2. Marshall
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タイ国政府観光庁HPリニューアル完成!ダイビングのページを担当しています。

(37).jpg

タイ国政府観光庁オフィシャルHPがパワーアップしてリニューアル!!
タイのみどころを豊富な情報とビジュアルで紹介しています。

http://www.thailandtravel.or.jp/index.html

ダイビングはレイアウトも含め全ページにわたり僕の写真と文章です。

http://www.thailandtravel.or.jp/theme/diving/index.html

今後も継続的にアップして行きますので楽しみにしていてくださいね!



  1. 2009/08/18(火) 17:29:20|
  2. Thailand
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Profile

写真家 楠哲也

_MG_8127f2.jpg

タイの小島に6年住んだのち写真家に転身。タイで培ったダイビングの技術を生かし、帰国後は週刊誌などで水中をテーマにした写真を次々に発表、広告や雑誌の撮影で年間の半分近くを海外取材に費やす。 現在は水陸のスチール撮影にとどまらずタイの国営放送でムービーカメラマンも担当している。
オフィシャルホームページは
tetsuya-kusu.com

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ダイバーも、そうでない方にも、タイの水中に広がる色とりどりの水中景観を楽しんでいただける斬新なフォトブック。仕事中のちょっとした息抜きに楽しんでいただけるようハンディなサイズにしました。

【サイズ】 B6 100ページ
【定 価】 2.500円(税込)
日本限定2000部
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ご注文の際はメールにてお問い合わせください。

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  • タイ国政府観光庁HP内「LET'S THAILAND」
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